[レポート]現代のフランスを代表するピアニストが紡ぐ、珠玉のフレンチ・プログラム~アレクサンドル・タロー ピアノ・リサイタル

 2023年10月19日(木)19時より箕面市立メイプルホール大ホールにて、「《身近なホールのクラシック》アレクサンドル・タロー ピアノ・リサイタル」がおこなわれました。

 この公演は現代のフランスを代表するピアニストであるアレクサンドル・タローさんによる、フランスのクープラン、ドビュッシー、ラヴェル、ノルウェーのグリーグを組み込んだピアノ・リサイタルです。また、開演15分前には音楽ライターの高坂はる香さんによるプレ・トークがあり、曲の聴きどころやピアニストの解説を聞くことができました。

 当日のプログラムは以下の通りです。


クープラン 5つの演奏会用小品集
ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲(アレクサンドル・タローによる編曲版)
グリーグ 抒情小品集より
      第1集作品12「アリエッタ」「祖国の歌」/第2集作品38「子守歌」「ワルツ」
      第4集作品47「悲歌」「メロディ」/第3集作品43「春に寄す」「蝶々」
      第8集作品65「トロルドハウゲンの婚礼の日」
ドビュッシー 前奏曲集 第1巻より
      第1曲「デルフィの舞姫」/第3曲「野を渡る風」/第6曲「雪の上の足跡」
      第10曲「沈める寺」/第7曲「西風の見たもの」
ラヴェル 亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェル ラ・ヴァルス(アレクサンドル・タローによる編曲版)

アンコール曲
D・スカルラッティ ソナタ ハ長調 K515
E・ピアフ ピアノによる即興演奏「パダン・パダン」


 開演後、非常に爽やかな表情でタローさんが舞台に登場し、ピアノ椅子に座ると何かを宿したような天を見つめる仕草と指先までの動き、また会場の静けさも相まって目が釘付けになりました。

 タローさん自身によって楽曲および曲順が決められたそうで、このリサイタル全体を通して「音楽で構成されたひとつの物語」を見聞きしているような感覚になり、タローさんでしか味わえない世界観に浸ることができました。また、余韻の使い方が非常に繊細であり、ラスト一音の数秒の余韻が心地よいという体験は新鮮でした。

 その中でも特に印象に残っているプログラムは「牧神の午後への前奏曲」と「ラ・ヴァルス」です。この2作品はどちらも元は管弦楽作品であり、今回はアレクサンドル・タロー自身によるピアノ編曲版で演奏されました。ピアノ1台で演奏されているとは思えないほどの音数と迫力に圧倒され、細やかな表現力に思わず息をのみました。

 また、「ラ・ヴァルス」やアンコール演奏後は、ブラボーと発する方、立ち上がって拍手を送る方もいらっしゃり、拍手が数分間続きました。それほどにタローさんの魅力が最大限詰め込まれた特別なプログラムでした。

(執筆:船積悠雅)