第372回 市民のためのオルガンコンサート~風と光の中へ~〔レポート〕
2024年10月12日(土)13時30分、宝塚ベガ・ホールにて第372回 市民のためのオルガンコンサート~風と光の中へ~が行われました。この公演は国内外問わずソロ活動、数多くのオーケストラや合唱団との共演など幅広く活動を行っているオルガニストの太宰まりさんによるパイプオルガンのコンサートです。曲間には太宰まりさんご自身がドイツに留学した際のエピソードも交えながら曲の解説をしてくださいました。
1曲目のN.ブルーンス《前奏曲 ト長調》は足鍵盤を巧みに演奏しており、ペダルソロがとても印象的でした。太宰さんが曲前にこの曲を万華鏡のようだと表現していらしたのですが、本当にその通りで幼き頃、万華鏡覗いたときの情景が頭に浮かび、ワクワクしたあの頃を思い起こさせるような曲でした。
2曲目はJ.Sバッハ《いと高きところの神にのみ栄光あれBWV711》、《いと高きところの神にのみ栄光あれBWV676》《いと高きところの神にのみ栄光あれ BWV715》でした。J.Sバッハは、有名なコラールである《いと高きところの神にのみ栄光あれ》を何通りにも編曲していて今回はその中の3曲を演奏しています。BWV711は、とても軽やかで弾むような演奏、BWV676はとてもなめらかでハーモニーの重厚感、BWV715はとても煌びやかで華やかな演奏で、3曲とも同じメロディテーマをアレンジして組み込まれており、元の曲は同じなのに全く違う曲を3曲聴いたかのような気分になりました。コラールでは表現できないパイプオルガンならではの演奏でありつつ、まるでコラールを聴いているかのような演奏でした。
3曲目はJ.Sバッハ《前奏曲とフーガ ホ短調》で、この曲は移り変わりが激しい曲で、重々しい雰囲気から始まり、急に柔らかく可愛らしい曲調になり、また重々しい曲調に戻りを繰り返し、最後は明るい未来を感じるような演奏でした。重々しい曲調は、まるで北風のようで柔らかい曲調は春風のような広々と自由に踊り舞う“風”のような曲だと感じました。
4曲目はTh.デュボア《オルガンのための12の小品より Ⅵ.アレルヤ Ⅸ.天国にて Ⅷ.光あれ》でした。《アレルヤ》は、明るく堂々としていて強い想いを感じ、《天国にて》は、音は少なくシンプルでありながらとても美しい旋律で、まるで夢の中にいるような今にも消えそうな儚い演奏で、なにか救われるような気持ちになりました。《光あれ》は、柔らかく、なめらかでありながら強いタッチで天の導き、終わりを感じる演奏で3曲通してとても物語性を感じる作品でした。
アンコールはE.Lemaigre《カプレツィオ》で、とても軽やかな小鳥のような可愛らしい曲調でお昼どきのバルコニーの情景が浮かび、ぽかぽかとした気持ちになりながらコンサートは幕を閉じました。
タイトル通り、陽だまりのようなあたたかい“光”を全身に浴び、ときには強く、優しく吹く“風”を感じる今の季節にぴったりの素敵なコンサートでした。
(執筆:早坂彩萌)