ザ・カレッジ・オペラハウス  その1〔INTERVIEW〕

インタビューイー中村孝義阪急宝塚線ミュージック駅伝MOT! 実行委員長/大阪音楽大学理事長)
インタビュアー:大阪音楽大学ミュージックコミュニケーション専攻 山上あゆみ(4年)、宮前あかり(3年)

2021年11月1日(月)大阪音楽大学ザ・カレッジ・オペラハウスで開催されるザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団第59回定期演奏会の聴きどころを伺いました。

■オペラ演奏のためのオーケストラ、ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団
ザ・カレッジ・オペラハウスでは、以前夏にモーツァルトのオペラ、秋に20世紀のオペラを上演していました。それだけではなく、春にはロマンティックなオペラを演奏会形式で上演していました。学生オペラは今も継続していますが、このように以前はオペラをもっと頻繁に上演していたのです。近年は、さまざまな環境の厳しさもあって、秋に1回のみ公演を行ってきましたが、昨年はコロナの影響でオペラを上演することはできませんでした。オペラ公演が減ったこともあり、その補完として2019年よりザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団のみによる定期演奏会を再開しました。過去2回は、そのメインとして交響曲を演奏したのですが、ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団はもともとオペラ演奏のためのオーケストラとして結成されたのだから、定期演奏会でもオペラのオーケストラらしさを出したい。ということで今回は演奏会形式でもいいから、オペラらしさを味わってもらえるような演目を考えました。

■期待の新星によるコンチェルト
定期演奏会の前半は、オペラ作曲家プッチーニの若き日の管弦楽作品「交響的奇想曲」と、2020年度に大学院を修了した濵田凌平さんの独奏で、ジョセフ・ホロヴィッツの「ユーフォニアム協奏曲」を演奏します。学内の優秀な人に演奏の機会を持ってもらいたいという意図があります。

■新しいコンサート・オペラ「スザンナの秘密」
後半は、「コンサート・オペラ」を上演します。エルマンノ・ヴォルフ=フェラーリのオペラ「スザンナの秘密」は登場人物が3人(うち一人は黙役)しかいない、1時間ほどのオペラです。演出は本学卒業生で、現在客員教授を務めておられる井原広樹さんが手がけています。本格的なオペラを上演するのは、経済的にも人材が多く必要な点でも大変ですが、演奏会形式ならそれが比較的軽微で済みます。とはいっても十分にオペラの醍醐味が味わえるような工夫をした、音楽とお芝居、映像の入った新しい「コンサート・オペラ」の形を追求しています。なお映像にはミュージックコミュニケーション専攻の久保田テツ先生が関わっています。

コンサート・オペラ「スザンナの秘密」の映像を手がける久保田テツ先生(ミュージックコミュニケーション専攻) 「今、煙と格闘してます!」

■本学人気教授出演!
オペラ「スザンナの秘密」の出演者3人は大阪音楽大学を代表する専任の教授です。東京の新国立劇場でも活躍する晴雅彦さんがジル伯爵役、石橋栄美さんがスザンナ。田中勉さん演じるサンテは、何も声を発しない黙役でただ演技をするだけ。田中さんの素晴らしい声や歌を聴けないのは残念ですが、オペラ歌手にとって、歌いながら動くのは慣れているけど、歌わないで動くのはとても難しいと言っていましたね。

■コロナ禍でのオペラ上演
ただオペラは歌うし、夫婦の話だから抱き合ったり、キスをする格好をしたりもする。でも、ディスタンスを取ったらよそよそしくて全然面白くもない。結局PCR検査を重ねて進めていくというやり方を取ることで、この問題を克服する努力をしています。感染症対策は万全に取りながら、できるだけ自然な演出をしているというわけです。今オペラをやることは、ものすごく大変なことですが、敢えてチャレンジしています。感染症対策は十分取っていますので心配なくいらしてください。

■ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団の演奏に太鼓判!
日本では唯一、オペラを専門に30数年の活動を続けてきたザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団のオペラ演奏力には太鼓判を押します。牧村邦彦さんは関西を代表するオペラ指揮者で、ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団の正指揮者です。今までこのオーケストラは、ザ・カレッジ・オペラハウスが、他に類例のない3回も文化庁芸術祭大賞を受賞する上で大きな役割を果たしました。今回は、コンパクトな形ですが、オペラやオペラ・オーケストラならではのエッセンスを聴ける機会で、まさにザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団の定期演奏会ならではの醍醐味が味わえると思います。普通のオーケストラの定期演奏会とは違いますからね。オペラをやるのが本当に上手い。オペラは本来、普通のシンフォニー・オーケストラが一朝一夕に簡単にできることではないのですよ。舞台で歌っている歌手たちの息遣いを即座に把握し、それに対応する能力がなければならないのですから。普通のシンフォニー・オーケストラと違う、オペラ専用のオーケストラによる舞台と一体となった演奏が聴きどころです。

(編集:渡邊未帆)