豊中市立文化芸術センター〔INTERVIEW〕

 豊中市立文化芸術センター総合館長の小味渕彦之さんに、インタビューをさせていただきました。昨年度のMOT!公演の様子や、今年度の公演の魅力、またホールで音楽を聴くことの魅力などをお話いただきました。

―まずは昨年度のMOT!の公演「センチュリー豊中名曲シリーズVol.23『夜、でしゃばる悲哀』」の反響はいかがでしたか。

 昨年度の公演は、年4回の日本センチュリー交響楽団との共催で行う「豊中名曲シリーズ」であり、シリーズ公演の中の一公演をMOT!参加公演として実施しました。「豊中名曲シリーズ」にいつも来てくださる方、日本センチュリー交響楽団の公演に来てくださる方、色んな方が来られます。その中で昨年は角田鋼亮さんの指揮、周防亮介さんのヴァイオリンでドビュッシーとグラズノフのプログラムを取り上げました。

―お客様の様子や表情はいかがでしたか。

 センチュリー豊中名曲シリーズは年4回の企画を実施しており、豊中文化芸術センターの一つの軸の企画となっています。その中でオーケストラを普段から聴いているオーケストラファンの方はもちろんのこと、センチュリー豊中名曲シリーズではストーリーテラーという形で藤井颯太郎さんに毎回ストーリーを書いていただくことで、様々なジャンルとの接点を作りながら新たなお客様を呼び込むということをコンセプトとして実施しています。そういう意味では、初めてオーケストラを聴く方も来ていただいただろうし、単にオーケストラの演奏会だけじゃないもっと複合的にお客さんを呼び込めることができていたのではないかと考えています。その上でMOT!の参加公演としては、阪急宝塚沿線のホールと大阪音楽大学が共同し、その中で新たな聴衆の開拓ができていたのではないかなと思いました。

―ありがとうございます。今年のMOT!参加公演「極-縦笛と横笛が織りなす調和-」は、大阪音楽大学ミュージックコミュニケーション専攻との共催公演で、昨年の10月に実施した「極~知っているのに知らないリコーダーの魅力~」のシリーズ公演でもあります。私自身は昨年度「極」のコンサートから企画に携わっておりました。昨年の公演では本当にたくさんのお客様にご来場いただき、リコーダーの秋山さんの演奏や素敵なキャラクターも楽しんでいただけたのではと感じています。豊中文化芸術センターのみなさまとしてはいかがでしたでしょうか。

 リコーダーという楽器は、ほとんどの人たちが義務教育の過程の中で触れてきた楽器ですが、同じ楽器とは思えない聴いたことのない響きがすること、それが一つのコンサートとしてのアピールポイントになったと考えていますし、そういうところをお客様にも楽しんでいただけたのではと想像します。

―ありがとうございます。続いて、今年のMOT参加公演「極-縦笛と横笛が織りなす調和」は、ミュージックコミュニケーション専攻の学生の企画となりますが、普段豊中文化芸術センターで主催されている公演と学生が企画する公演にはどのような違いや特徴を感じていらっしゃいますか。

 普段の公演というのは、例えば「豊中名曲シリーズ」等当館が主催している公演ですよね。逆の言い方をすると、違いがなければやっている意味がないとは思っています。学生さんが企画する公演は、学んでいくプロセスの中で様々な試行錯誤があって、それをどうやって実現させていくかというところに焦点があると思っています。我々が普段ホール主催としてやっているものというのは、そのプロセスが出来上がっているもので、その先に何が作れるのかということが焦点になります。それぞれの公演に足を運んでもらいたいお客さんを想像しつつ、それ以上の何か広がりを持った形でホールの主催事業、そして豊中市のホールだから公共ホールの主催事業としてどういう形が作れるかということを考えています。どちらがではなく、立ち位置が全く違うと思います。

―私自身も実際に公演の企画に関わらせていただき、色々なことを学びばせていただいているなと思います。

 そういうプロセスを学生として経験できることは、これからどんな仕事に就くにせよ大きな糧になるのではないでしょうか。ぜひその経験を活かして、次に繋げていってもらいたいと思います。その点において共催でやるということは意味があるので、学内での公演ではなく、公の施設を使って公演できるというところに意味を見出していってもらえたら良いかな。そういった機会を提供できることが、こちらとしての重要な点でもある訳です。

―ありがとうございます。


―続いて、「ホールで聴く音楽の魅力」について、豊中市立文化芸術センターのみなさんが考えられていることを教えてください。

 色んな考え方があると思うのですが、ホールで音楽を聴くという行為、これは多分非日常の空間を味わうという魅力があると思います。私自身、非日常の空間を味わうことに喜びを求めるということが割と重要だと思うのですが、普段なかなか味わえないことだと思うのですよね。プロフェッショナルの演奏家の演奏を、そこにいる聴衆と演奏者のコミュニケーションの中で、限られた時間で分かち合う体験をしていく。普段の生活の中では味わえない。けれども決して特別ではない。我々が生きていく中で、豊かな人生を送るための一つの音楽というものを提供できたら良いと思います。

―音楽イベントとしては、コンサートホール以外にも屋外での公演やイベントもありますが、「コンサートホール」での体験の魅力は何でしょうか。

 ホールでの公演は、一つの空間の中でアコースティックな響きが、PAを使わずにダイレクトな形でお客さんに伝えることができる空間として設計されていますが、そこでの音との濃密なコミュニケーションというのはホールの中でしか味わえないと思っています。そこで必ず重要となるのが、一緒に聴いているお客さんがいるということ。一緒に聴く人、そして舞台で演奏している人、その両者の共有空間が出来上がる。そこは他では得難いことかなと思っていますね。

―ありがとうございます。今回の公演「極-縦笛と横笛が織りなす調和-」について、企画した学生としては、昨年度もご好評をいただいた公演を踏まえた上で、さらにパワーアップできたらと考えています。今回はリコーダーに加えてフルートを編成に加え、縦笛と横笛の交わり、織りなすハーモニーをお楽しみいただけたらと企画しました。今回の企画についてホールの方からのご意見もお聞きできればと思います。

 同じ笛ですが、縦と横で大きな違いがあり、そのコントラストを見せるということは、公演として前回よりもさらに多彩な笛の魅力が浮かび上がるのではないかと期待しています。

―これまでの公演でリコーダーとフルートの組み合わせはありましたか。

 主催公演としてはこの編成に特化したものはなかったです。縦笛と横笛がというコンセプトの公演はなかなかなかったかもしれませんね。

―ありがとうございます。ところで、小味渕さんは今年度より新しく豊中市立文化芸術センターの総合館長になられたのですよね。これからこのホールを地域にとってどんなホールにしていきたいと考えていらっしゃるかをお聞きしたいと思います。

 足を運んでもらえたら何か楽しいことがある、そして美しいものに触れられる、そういう魅力がある場所として気軽に足を運んでもらえる、日常の生活の中で触れることができないものに気軽に出会える場所にしてもらえたらなと思っています。

―地域の方はもちろん、より広い地域の方々に多く来ていただくための工夫は何か考えていらっしゃいますか。

 一つ一つの公演ほか、様々な主催ワークショップ等もやっています。レジデントアーティストによる様々なアウトリーチも行っているので、このように魅力を発信し続けることで、より広い地域の皆さん、豊中市外も含めてより多くの地域の皆さんに足を運んでもらえたらと考えています。

―色んな入り口があるのですね。

 そうですね。どこから来ていただいても大歓迎です。

―ありがとうございます。


 お忙しい中インタビューにご協力くださった小味渕彦之さん、ありがとうございました!
「極-縦笛と横笛が織りなす調和-」は10月5日(木)19:00より豊中市立文化芸術センター小ホールにて開催です!
みなさま、是非ご来場ください。