大阪音楽大学 ザ・カレッジ・オペラハウス〔INTERVIEW〕
ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団 第63回定期演奏会の聴きどころについて、中村孝義理事長にお訊きしました。(インタビュアー:西村菜々夏)
⚫︎モーツァルトとサリエリの因縁
―今年の「阪急宝塚線ミュージック駅伝MOT!」参加公演、ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団 第63回定期演奏会では、2つのオペラが上演されます。第1部にモーツァルトのオペラ《劇場支配人》、第2部にサリエリのオペラ《はじめに音楽、それから言葉》。この2つの作品はどういう関係があるのですか?
中村孝義理事長(以下、中村):『アマデウス』(1984)という映画がありました。それまで「天才」や「神童」と呼ばれてきたモーツァルトが、浪費家で賭け事や女遊びが好きな人間として描かれていて、全てが事実とは言えないにしても、一般の人のモーツァルト観をかなり変えた映画でした。そんな人間としてはいい加減なモーツァルトにも関わらず、その才能は人並みはずれていて、宮廷音楽家サリエリが嫉妬して、最後には毒殺してしまったという話として描かれていますね。
⚫︎ドイツ語音楽劇(ジングシュピール)とイタリア・オペラ、あなたはどっちを選ぶ?
―今回、そんな因縁のあった二人の作品を並べた上演となるわけですね。
中村:その二人を競わせたのが当時の神聖ローマ皇帝ヨーゼフ2世でした。1786年にシェーンブルン宮殿内のオランジュリー(大温室)で、今回の演目、サリエリのイタリア・オペラ《はじめに音楽、次に言葉》とモーツァルトのドイツ語の音楽劇(ジングシュピール)《劇場支配人》が並べて演奏されました。当時、サリエリはイタリア出身の宮廷楽長、モーツァルトはザルツブルク宮廷を解雇された自由音楽家で、ウィーンでドイツ語オペラ《後宮からの逃走》(1782)などを作曲していました。
―今はモーツァルトの方がずっと有名ですが、当時はサリエリの方が偉かったのですね。
中村:ヨーゼフ2世にはイタリア・オペラとドイツの音楽劇(ジングシュピール)を競わせ、ジングシュピールに勝たせたいという目的もありました。当時イタリア・オペラの方がもてはやされていましたが、ヨーゼフ2世も民衆の啓蒙のためにドイツの音楽劇を推奨していたところでした。
―当時、この勝負どちらが勝ったのですか?
中村:当時はサリエリのイタリア・オペラの方が、断然人気があったようですね。
―今回、サリエリのオペラ《はじめに音楽、次に言葉》は、井原広樹先生の演出で、ミュージックコミュニケーション専攻の久保田テツ先生も映像で参加していて「音楽とお芝居、映像の新しいかたちのコンサート・オペラ」というかたちで上演されますね。現在のお客さんがどんな感想を持つか楽しみですね。
―モーツァルトの《劇場支配人》は、どんな形で上演を?
中村:モーツァルトの《劇場支配人》の方は、音楽は序曲と4曲のみしかなく、あとは長大なセリフがあり、当時の事情が分からないと理解しにくいところもなくはないため思い切って全部カットして、代わりに指揮者の牧村さんが曲をつなぐ言葉を考えられているようです。ウィーンでやっているオペレッタなんて、時事問題や政治を皮肉るようなことをアドリブで入れるなど、かなり自由きままにやっていますし、今回どんなつなぎが加えられているかは見てのお楽しみということで!
―2作品とも大阪音楽大学でしか見られないオペラになりそうですね!
⚫︎大学のオペラハウスの役割
―大阪音楽大学は全国でも数少ないオペラハウスを持つ大学と言われています。大学のオペラハウスの役割についてお聞かせください。
中村:「舞台はお金と正比例する」と言われています。しかし、なかなか財政は厳しくて大きなオペラを上演するのは難しい。それでも、大学のオペラハウスは世間でやっている有名な演目を同じようにやっても仕方ありません。どこでもやっていない挑戦的な演目を上演して、お客さんに新しい発見をしてもらうことが大学のオペラハウスの役割だと思っています。
―私たち学生たちもこうした貴重な機会に積極的に学びたいと思っています。
⚫︎阪急宝塚線ミュージック駅伝MOT!への期待
―さて、最後に今年で3回目となる「阪急宝塚線ミュージック駅伝MOT!」の取り組みについて、中村理事長が実行委員長として期待していることをお聞かせください。
中村:とてもいい取り組みだと思う。我々のような世代ではなくて、若い学生のみなさんの発想で新しいことに挑戦して欲しいと思います。そしてそれをしっかりと後輩に伝えていってください。
―今日はどうもありがとうございました。
(構成:渡邊未帆)
ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団 第63回定期演奏会
●開催概要
日 程|2023年11月5日(日) 14:00開演(13:15開場)
会 場|大阪音楽大学 ザ・カレッジ・オペラハウス
プログラム|【第1部】
モーツァルト/オペラ「劇場支配人」より
【第2部】”Concert’ Opera”
サリエリ/オペラ「はじめに音楽 それから言葉」