箕面市立メイプルホール〔INTERVIEW〕
箕面市立メイプルホールの和田大資さんに、インタビューをさせていただきました。昨年度のMOT!公演の様子や、今年度の公演の魅力、またホールで音楽を聴くことの魅力などをお話いただきました。
―昨年度のMOT!公演「北村朋幹ピアノ・リサイタル」の反響はいかがでしたか。
昨年この「北村朋幹ピアノ・リサイタル」にあわせて、小ホールでオープニングイベントをしていただいたので、大阪音楽大学の学生さんもオープニングイベントに来てそのままコンサートを聴いてくださり、とても良い機会になったと思っています。
実は、この「北村朋幹ピアノ・リサイタル」ですが、箕面市で開催した後、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールでも行われました。箕面市立メイプルホールと同じプログラムを、滋賀県では美術館で上演されました。びわ湖ホールでは邦人作品を特集した「北村朋幹 20世紀のピアノ作品(ジョン・ケージと20世紀の邦人ピアノ作品)」というコンサートをされています。この公演がサントリー芸術財団 第22回(2022年度)佐治敬三賞を受賞されました。メイプルホールでの公演がきっかけということもあり、私たちも一緒に賞をとった気になって、反響としては大きかったです。もちろんびわ湖ホールさんの成果ではありますが、仲間に入っているがしていて良いなと思っています。
また北村朋幹さんとはこのコンサートですごく良い関係を築くことができたので、「またぜひ次の機会に面白いことをしましょうね」とお話をしてお別れしました。また近い将来、北村さんと面白い企画を箕面市で実施できたらいいなと思い、次につながる演奏会になったと思います。
また、東京のホールの方をはじめ、非常に多くの皆様がこの公演のことを知ってくださりました。その後東京のクラシックシーンで関わっている方たちが、「大阪の箕面で意欲的な取り組みをしている地域ホール」ということで、メイプルホールにお声をかけていただくことが多くなり、この箕面の取り組みが風の便りで東京までいっている、箕面から全国に向けて発信できているという点で嬉しく思っています。
―クラシックや今回使用されている楽曲の魅力について音楽初心者にもわかりやすく教えてください。
今回、フランス人のピアニストがフランス音楽を演奏されるということがひとつの魅力になります。チラシにもありますがドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」とラヴェルの「ラ・ヴァルス」がアレクサンドル・タローさんによる編曲版になります。もともとこの2つはオーケストラで演奏されるのが有名で、聴いたことがある方もいらっしゃると思いますが、今回はピアノで、しかもタローさん自らのアレンジで弾いてくださいます。これはここでしか聴けない、タローさんでしか聴けない2曲になるのではないかと考えており、一つの魅力なのかなと思います。
また、クラシック初心者・音楽初心者の方に向けていうと、楽譜というのは紙に書いてある情報だけであり、これだけでは音楽にはならないのですが、この楽譜をタローさんであればピアノで音にすることができる。次に音にしただけでも音楽ではなく、やはりそれを聴いてくださる皆様がいる。つまり、クラシック音楽にあまり馴染みがないという方も、実はその場にいてくださることで音楽を作ることに一緒に参加してくださっていることになると思っています。きっとドビュッシーにしろ、ラヴェルにしろ、自分が書いた楽譜がその場にあるだけでは全然音楽ではなく、かといってタローさんが来てひとりで弾いているだけでも音楽ではない。やはりその場にお客様がいて、聴いてくれる人がいてここで初めて音楽をみんなで共有できる、その世界を楽しむことができるということだと思っています。
馴染みがあるなしに関わらず、一緒に音楽を作るつもりでいらしてもらえたらと思っています。
―今回ご出演されるアレクサンドル・タローさんはどのようなアーティストですか。
実は私はまだお会いしたことがありません。10月にタローさんが来日されるのですが、関西では3つ、京都市交響楽団でコンチェルトとソロを演奏する、箕面でリサイタルを演奏する、兵庫県立芸術文化センターではサティを題材とした舞台作品を上演します。リサイタルという意味では箕面と東京のトッパンホールで演奏されます。トッパンホールではタローさんがソロリサイタルをされるのは4回目で、実は今回広報協力という形でトッパンホールの方に連絡を取ってタローさんの魅力について、メッセージを寄せてもらっています。そちらを今度メイプルホールの情報誌に載せようと思っています。その中で仰っているのは、世界中に素晴らしいピアニストはいっぱいいるけれども、なぜタローさんを選び続けるのかというと、唯一無二の個性があり、非常に繊細で、立ち居振る舞い、立ち姿も飄々としているが、オリジナリティとか独創的な世界観を持っていらっしゃっているということ。選曲もタローさんがされるのですが、曲順を非常にこだわって作ってらっしゃって、タローさんのリサイタルを聴くということは、ひとつの小説を読んでいるかのような“起承転結”みたいなストーリーが聴き手に説得力を持って働きかけてくるようなプログラムを構成する力があるというお話があって、私もなるほどと思いました。彼自身、かっこよくてオシャレだそうですごく独特な世界観があって、それを開場に来たお客様と共有できるという意味では、“ひとつの小説や映画をみるようにコンサートを聴かせることができる”アーティストだと思います。
―箕面市立メイプルホールさんが思う「ホールで聴く音楽」の魅力を音楽初心者にもわかりやすく教えてください。
メイプルホールで聴く音楽の魅力だとすると、先日いずみホールさん(※住友生命いずみホール)に行ったときにとても残響が多くて、すごく響きがあって改めていいホールだなと思いました。いずみホールさんはクラシック専用ホール、一方メイプルホールはクラシック専用ホールではなくて多目的ホールです。このホールがどちらを指すのかはケースバイケースですが、当然クラシック専用ホールで聴いた方が環境は良いです。アーティストにとってもそうですし、聴衆にとってもそうです。でも、メイプルホールで聴くときの魅力は、コンサートタイトルにもあるように“身近なホールのクラシック”という、よりお客様が音楽に対して、アーティストに対して、その場に対して身近さを感じてもらえる親密な空間を感じてもらえるようなホールでありたいと思っています。そういう意味ではサロンというとこじんまりとしている、コンサートホールというともっと大きい、その間くらいの空間でコンサートを聴くというところがメイプルホールで聴く音楽の魅力なのではないかと思います。
リラックスして足を運んでもらって、身近に顔なじみの人がいたり、お客様同士が顔なじみだったり、そんな身近な空間で目の前で起こっているパフォーミング・アーツを楽しんでもらえたらと思っています。
音楽初心者の方っていうと、私たちのお客様はまずは地域住民の方々がメインで、普段私たちの施設に来てくれている人たちにとっては顔なじみのスタッフがいて、ご挨拶して、ゆっくり楽しんでくださいという導入から客席に座ってもらって、提案する内容は非常にこだわりを持って選んでいますので、アーティスト、プログラムを身近なホールでぜひ楽しんでいただけたらなと思っています。
―今回の公演「《身近なホールのクラシック》アレクサンドル・タロー ピアノ・リサイタル」の見どころを教えてください。
まずは、タローさんの世界観を一緒に楽しみましょう。小説や映画を見るようなひとつのつながり、時間の流れを楽しめると思っています。あとは開演前に大ホールの舞台上にて、音楽ライターの高坂はる香さんのプレ・トークがあります。このプレ・トークもぜひ聞いてもらいたいので、開演は19時からですが15分前には会場に来ていただきたいです。高坂さんにはチラシの裏側にも推薦文を書いていただいていて、9月、10月には3回講座を実施したり、当日配布するプログラムにも高坂さんに曲目解説を書いていただいていたりしています。そういう意味でいうと、このコンサートをより楽しんでいただくための橋渡し役を音楽ライターの高坂はる香さんにお願いしています。高坂さんの視点からの楽しみ方も受け取ってほしいですし、お客様がリラックスして身近なホールで楽しんでいただけたらと思っています。
お忙しい中インタビューにご協力くださった箕面市立メイプルホールの和田大資さん、ありがとうございました!
「《身近なホールのクラシック》アレクサンドル・タロー ピアノリサイタル」は10月19日(木)19:00より箕面市立メイプルホール 大ホールにて開催です!
みなさま、是非ご来場ください。